コラム

②診察・検査と診断~インプラントコラム~

「公益社団法人日本口腔インプラント学会認定専門医」として、「インプラント治療」を検討されている方に向けて、出来るだけ噛み砕いてわかりやすく正しい情報をお伝えしています。

今回のテーマは
②診察・検査と診断
  全身状態の診察・検査と診断
  局所状態の診察・検査と診断
  インプラント治療に対しする総合診断

についてお話していきましょう。

安心、安全なインプラント治療を行い、埋入されたインプラントを長期間良好に機能させるためには、治療に先立って患者さんの全身および局所の状態を正確に把握し評価することが必要不可欠です。

特にリスク(危険度)がある患者さんに対しては、慎重にインプラント治療が可能かどうかを判断する必要があります。


●医療面接

当院での「診察・検査と診断」は、まずは「医療面接」から始まります。
医療面接とは、主訴、現病歴、既往歴、家族歴、心理的・社会的因子などを患者さんにお尋ねし医療情報を得る医療行為のことです。簡単に言い換えると問診を更に丁寧に深堀りしたもの、と捉えてください。

●インプラント治療の診察・検査と診断
インプラント治療のステップに応じて、次のようなリスクファクター(危険因子)を把握、評価していきます。

・手術に対するリスクファクター
・オッセオインテグレーション(インプラントと骨が直接結合すること)の獲得と維持に対するリスクファクター
・上部構造(かぶせ物)製作と維持に対するリスクファクター

 

●全身状態および局所状態の診察・検査と診断


口腔インプラント治療指針2020 (公社)日本口腔インプラント学会編

 

インプラント治療に際して、全身状態の検査と診断は必要不可欠のものです。
例えば、疾患により免疫力が低下されており、その影響で歯周病を起こしやすい状態であれば、骨とインプラント体が結合されにくい場合があったり、血液をさらさらにする薬を投与されている場合は、インプラント治療時に出血が止まりにくい場合もあるのです。

「この情報がインプラントに何の関係があるの?」

とお感じのこともあるかもしれませんが、出来る限り正確な回答をお願いしております。(検査時に疑問点やご質問がありましたら、ご遠慮なくお申し付けください)

【全身状態の診察】
・年齢
・喫煙
・循環器疾患:高血圧、心疾患、脳血管障害、血液疾患、消化器疾患、肝機能障害、腎機能障害
・呼吸器疾患:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患
・糖尿病
・骨粗鬆症
・自己免疫疾患:副腎不全、易感染性、骨代謝への影響、口腔乾燥
・精神・神経疾患:精神疾患、認知症、パーキンソン病
・アレルギー:薬物アレルギー、金属アレルギー、アトピー性皮膚炎
・腫瘍


【全身状態の検査】

・血液検査
・放射線学的検査
・既往歴、投薬歴の聴取


【全身状態の診断】

評価をする際には、治療可能な状態を除いて禁忌症に相当するかの判断が重要となります。
禁忌症とは、全身的、局所的状態からインプラント治療を「行ってはならない」ケース、症状のことです。
例えば、白血病や血友病などの血液疾患や免疫不全の方や放射線治療を受けている方などは、インプラント治療は「絶対的禁忌症」に該当します。

禁忌症には「相対的禁忌症」というものもあり、これは状態が改善されれば適応症として扱うことが可能であり、コントロールされていない感染症や糖尿病、高血圧症などが該当します。

こう記しますと、「私はインプラントは出来ないかも?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、問診やお薬手帳にて医科のかかりつけ医より医療情報を収集し、インプラント治療へのリスクファクターに該当するか評価します。
人間の体は一人ひとり違いますので、持病があるからできないとあきらめずに、まずはご相談ください。

 

●局所状態の診察・検査と診断
患者さんの局所(インプラントを埋入する場所)状態がインプラント治療を行うのに適しているか、最適な治療であるか否かを判断するために、以下のような診察と検査を行います。


【局所の評価に必要な検査項目】
・顎関節、筋の診察・検査
・口腔内の診察・検査(咬合状態・ガイド、歯周、唾液量、欠損状態)
・軟組織の状態(病変、付着歯肉の量、口腔粘膜・歯肉の状態)
・欠損状態と分布、欠損の原因の推測
・審美領域に必要な診察・検査
・研究用模型による検査(顎堤形態、対向関係、想定される歯冠長・歯冠インプラント比)
・エックス線画像による診察・検査
・口腔機能(咀嚼、発音、嚥下)の診察・検査

 

【局所状態の診断】
局所状態に関する上記の診察・検査を行った後、総合的な診断を行います。
上記項目ひとつひとつの重みを横並びに評価するのではなく、個々に重要度が異なることを念頭に置きながら毎回診断を行っています。

こうした「体の情報」に加え、もう1つ大切な要素として、「患者さん自身の精神状態、治療に対する理解や協力的態度」も重要です。

インプラント治療をご希望されているにも関わらず治療にご協力頂けなかったり、治療期間、金額に誤解や不満が生じますと、円滑な治療の実施が困難になることがあります。

体の状態はインプラント治療を行う条件を満たしていても、治療の実施に際して、患者さん自身の理解、納得、協力が得られそうかどうかもインプラント治療実施の判断基準の1つです。

 

●インプラント治療に対する総合診断
ここまでの診察・検査と診断を通して、以下の3種類の診断を行います。

①長期的に安定的な予後が期待できる
インプラント治療が可能という診断です。もちろん定期的なメインテナンス、全身、局所状態の把握は継続して行っていく必要があります。

②インプラント補綴に長期的に脅威をもたらすリスクがある
全身状態では長期にわたる喫煙歴や糖尿病のHbA1cのコントロール不良など、局所状態では付着歯肉の有無や量、歯肉のbiotype(厚みや形態)や欠損の分布などがあげられます。
全身状態においては禁煙の徹底や医科への受診および定期健診の奨励などを、局所においては付着歯肉の獲得やbiotypeの改善のための前処置の治療計画への組み込みを検討するなどして
できるだけ長期リスクを減らすことで、①と同様の成果が得られます。

③インプラント治療を即時断念すべき
全身状態では心筋梗塞の発症直後や重篤な肝、腎機能障害などがあげられます。
局所状態では開口量の著しい不足により、器具がアクセスできず、インプラント埋入ができなかったり、インプラント埋入予定部位におけるガンが疑われる軟組織の疾患が認められるなど、このような場合はインプラント治療が不可能という診断です。

 

 

〜③口腔インプラントの画像診断〜

につづく。

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