コラム
とても怖いブラキシズムのおはなし
ブラキシズムとは、歯ぎしりと食いしばりのことです。
「歯ぎしり」とは睡眠中に行うもので、自覚することが少なく周囲の人に知らされて、初めて気付くことがほとんどです。
「食いしばり」は、日中・夜間に関わらず無意識のうちに歯を食いしばっていることを言います。
ブラキシズムで、歯や骨にかかる力は強い人で70㎏を超えると言われています。
そのために気づかない間に歯や骨に大きな負担がかかっているのです。
●コロナ禍で歯ぎしり・食いしばりが増加しています
2021年ADA(アメリカ歯科医師会)報告によると、コロナ感染拡大以降、歯ぎしり・食いしばり、歯の欠損が増加傾向にあることを歯科医師の70%が報告しています。
実際に、当クリニックにもそういった患者さんを拝見する機会が増えました。
歯ぎしりや食いしばりに対しては、マウスピース(ナイトガード)をつけたりすることで対処されることが多いですが、そこまで強く力がかからない場合には、これまで特に注意が払われていませんでした。
上下の歯が接触している時間は1日20分未満(食事中と会話中に瞬間的に接触)が理想的で、唇を閉じて舌を上あごにつけて歯を接触させないこと、鼻呼吸することが大切です。
「TCH(歯列接触癖)」は本来接触の必要性がないときに「弱い」咬みしめ・食いしばりをしてしまい癖になるというものです。
TCHは特に緊張・集中する場面や、うつむきがちな姿勢を長時間続けている時、1人で黙々と作業している時などに無意識に咬みしめを行うケースが見られ、代表的なケースとしてパソコンやスマホ等のタブレット端末の長時間使用が挙げられ、比較的若い方に多くみられます。
またTCHはストレスが大きな原因と言われており、生活環境の大きな変化などで症状が出現しやすい傾向にあります。
●TCHへの対応
・とにかく「歯を離すこと」を普段から意識する。
・忘れないように「歯を合わせない」と書いたメモや付箋紙を家のいたるところに貼ってみる(認知行動療法)
これだけでもTCHへの改善が見られます。
●ブラキシズムが続いたことにより起こる症状
歯のすり減り、歯がしみる、骨隆起、冠や詰め物がはずれる、歯が割れる、歯周病の進行、顎関節症、口の周りの筋肉の痛み、あごのずれ、頭痛、肩こりなど様々な症状が挙げられます。
●歯科医院と家庭、それぞれのブラキシズムへの対応
【歯科医院で行う対応】
・ナイトガードの作製(毎晩歯にはめて寝る)
・咬み合わせの調整をする(必要に応じて歯列矯正)
・歯周病の悪化を防ぐために、プラークコントロールやクリーニングを行う。
・しっかり咬めるように、虫歯など歯の治療をきちんとしておく。
【家庭で行う対応】
◎日常生活で気を付けること
・咬み合わせていることに気付いたらすぐに離す。
・唇や頬、顎など口のまわりの力を抜く。
・ストレスをためない。
・重い物を運んだり、激しい運動をする時は特に注意する(スポーツをする時はスポーツマウスガードの作製をお勧めします)
・肘をついて頬杖をつくことはできるだけ避ける。
◎就寝時に注意すること
・布団の中へは、極力悩みごとは持っていかず、リラックスして休む。
・高い枕は咬みしめやすくなるので避ける。
・寝る時の体勢に気を付ける(横向きはあごに力がかかりやすい)
◎食事時に注意すること
・左右均等に少しずつ嚙み砕くようにする。
・梅干しの種やビーフジャーキーなど極端に硬いものは、毎日のように食べるのは避けるようにする。
まずは、家庭で行う対応から試してみてください。
そして上記のような症状がみられたら、早めに相談、受診してください。
未だに終息を見ないコロナ禍ではありますが、普段からストレスを溜め込まないよう、ストレスを発散できるよう、自分の好きなことをする時間を持つことも大切です。
院長 友野博記