コラム
問診~傾聴へ
サービスを提供する人とサービスを受ける人。
原則としてその評価者はサービスを受ける人です。
SNSの普及により、個々が気軽に自身の評価を発信できるようになりました。
もちろん医療施設もその対象であり、口頭はもちろん、SNSや口コミサイト、
時にはお手紙で評価をいただくことがあります。
「食べたいものが食べられるようになった」
「人前で人目を気にせず笑えるようになった」
「長年のむし歯の悩みから解放された」
といった嬉しい評価もあれば、時に厳しいご意見をいただくこともあります。
厳しいご意見は正直堪えますが、それも貴重なご意見として受け止め、改善事項としてスタッフと共に取り組んでいく所存です。
ひとつ残念なこととしては、厳しいご意見の場合、そのほとんどが匿名であるという点です。
意見というのは直接言いにくいものですので、仕方ないといえば仕方ないのですが、その時の状況をより理解するためには直接、ご本人からお声が聞ければいいなと感じます。
私どもが提供している医療は、一般のサービス業とは性質が違い、
患者さんの希望=健康な口腔とならないこともあります。
口腔内の状況によっては、どうしても痛みを伴ったり、長い年月をかけて治療を進めなければならないこともあります。
痛くなく早く終わったけれど治っておらず再発を繰り返すという事態は再生の効かない永久歯の場合、患者さんにとっては損失でしかありません。
それでも、痛くなく早いは高評価を得ることができ、痛くて長いは低評価になることもあります。
前者の治療を行うつもりは毛頭ありませんが、そこにジレンマを感じることがあるのも事実です。
そんな中、先日「人は話し方が9割」という本に出会いました。
内容としては、患者さん、スタッフ、歯科関係者の方々とのコミュニケーションを充実させ、人間関係を円滑にする方法が書かれています。
ざっとキーワードをご紹介しますと、
スキルよりメンタル重視で 否定しない、うなずき徹底、プラストークで全肯定の環境作り。人間の大原則とは自分に興味、わかってほしい・認めてほしい、わかってくれる人が好き、よって「自分が話したいこと」ではなく「相手の求めている話」をする。「相手にメリットのある話」をする、話し方は聞き方であり、「顔の表情」「声の表情」「体全体の表情」を効果的に、自分の感情を言葉に乗せ、身振り手振りを使って相手にリアクションする、などなど。
これらは仕事以外の場面でも人間関係づくりに共通することだなと感じると共に、1つのヒントが頭に浮かんできました。
私たちは「痛くて長い」をご理解いただける話し方が出来ているだろうか?です。
(もちろん痛みには最大限の配慮を行っております)
ご理解いただける話し方をするためには、まずは患者さん自身のことをよく知らなければなりません。「話す」の前に「聴く」ことです。
「むし歯などの問題で生活の中のどのような場面でお困りなのか」
「患者さんが考える理想のお口の状態とはどのようなものか」
「これまでの歯科医院での経験談」
「診療の中で特に大切にしてほしいこと」
私たちが聞きたいことを聞く「問診」ではなく、患者さんの思いを聴く「傾聴」に。
これが現在の当院の目標です。そのためのトレーニングにスタッフ全員で取り組み始めました。
一朝一夕にはいかない目標ですが、一歩一歩、確実に進化していければと思っております。
今後も友野歯科クリニックをどうぞよろしくお願い致します。
友野歯科クリニック 院長 友野博記